久里浜医療センター

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当院の大腸内視鏡検査-「浸水法」による苦痛の少ない無麻酔大腸内視鏡

 大腸内視鏡というと「痛くて苦しい」「麻酔が必要」という認識の方がいまだ多いのではないでしょうか?
 まず大腸内視鏡での痛みとは何でしょうか。大腸内視鏡の痛みは腸が伸びすぎたり膨らみすぎて「張り裂けそう」、「ちぎれそう」という命の危険信号です。同じ痛みといっても歯を抜く時の痛みは不可避ですが命の危険を示すものではありません。
 抜歯の痛みは麻酔で除くべきですが、大腸内視鏡の痛みは命の危険信号であり麻酔で消すのではなく痛みを起こさない方が好ましいと思われます。また麻酔自体にも呼吸抑制や血圧低下、麻酔から覚醒した後の転倒などのリスクがあることも留意すべきです。
 ちなみに名人の大腸内視鏡は麻酔がなくても痛くありません。筆者も大腸内視鏡研修時代に内視鏡にかかわる医師皆が認める大名人 亀田クリニック光島徹先生の無麻酔大腸内視鏡を自ら経験し、「痛いどころか腸のどこに内視鏡があるのかさえ分からない」ことを確認しています。

 それではなぜ「大腸内視鏡は痛い検査」だったのでしょうか?大腸は教科書的には上行結腸と下行結腸は後腹膜に固定されていますが横行結腸とS状結腸は腸間膜を持ち固定されていません。これまで大腸内視鏡の痛みの多くは直腸から下行結腸へと大腸内視鏡が挿入されていく時に後腹膜に固定されないS状結腸を伸ばしてしまうため痛みを生じていました

 大腸内視鏡は体の左を下にした状態で施行されます。腸の進行方向を確認しながら挿入するため腸をある程度膨らます必要があり、従来は送気して腸を膨らましていました。ただ腸を送気して膨らますとおなかの中で浮き上がって腸が伸びてしまいます。かわりに水を入れると腸は浮かないため腸は伸びません。水を入れる方法は1988年に酒井義浩先生の「注水法」、1990年に関岡敏夫先生の「サブマリン法」として報告されています。
水を入れる方法は送気する方法に比べて腸が膨らみにくいため痛みが少ない長所がありますが「プールの水中から外を見ると見にくい」ように視界が狭まることがあり、腸の中に残渣があると撹拌されてさらに視野が悪くなる弱点がありました。
 ところが水を入れることに加えて「直腸・S状結腸の中の空気を完全に除去する」とまず視界を狭める水面がなくなります。さらに空気の浮力がなくなって水は重力で下行結腸に流れて行くため視界を遮る残渣は下行結腸に押し流され、内視鏡は注入した透明な水と一緒に進むため視野が改善します。内視鏡が進むと同時にS状結腸内の水がさらに下行結腸に流出していくため、S状結腸の容積が減少して自ずと縮みます。

 都合のよいことにS状結腸はらせん型をしているので水が流出して縮むと「らせん階段」のようになり内視鏡を「腸のらせん」に合わせて捻ると「コルク抜きがコルクに食い込む」ように内視鏡が腸の中に引き込まれます。すなわち直腸から下行結腸までS状結腸を伸ばすことなく直線的に挿入されます。S状結腸が伸びなければ痛みもなく麻酔も不要になります。「直腸・S状結腸の中の空気を完全に除去する」ことには大きなメリットがあったのです。
この方法で1年研修した医師の大腸内視鏡を筆者自身が経験しておりますが、名人の大腸内視鏡同様に「痛みがあるどころか、内視鏡が腸のどこにあるかさえわからない」ことを確認しています。
手術による癒着などの一部を除けば「浸水法」ではS状結腸はもはや容易で苦痛なく通過できる部位になったのです。

 

 当院ではこの理論を「浸水法」として発表し実践しております(Mizukami T. Dig Endosc 2007; 19: 43-48.)。
「浸水法」は2007年よりWater immersion methodとして米スタンフォード大学やUCLAでアメリカでの無麻酔大腸内視鏡への方法として導入され、2008年度DDW【世界で一番大きな消化器科の学会】のプレナリーセッションで「疼痛が少ないこと」、「初心者の検査時間が著しく短縮したこと」など従来法への優位性が発表され2010にはC W. Leung, R M. Soetikno Water Immersion Vs Conventional Colonoscopy Insertion: A Randomized Controlled Trial Showing Promise for Minimal-Sedation Colonoscopy. Endoscopy 2010; 42(7): 557-563として論文化され、2010年春にはUCLA主催のColorectal Cancer Symposium 2010で招待講演をしました (How I teach my trainees “WATER NAVIGATION COLONOSCOPY”. AJCM 2010; 7(3): 144-146)。

 国内でも酒井義浩先生御監修の消化器内視鏡「極めつけ大腸内視鏡」特集号2009 21(4)p537-544に「極めつけS状結腸通過法」として掲載して頂き、日経メディカル2010年6月号トレンドビュー「注水で大腸内視鏡を容易に鎮静、送気不要でS状結腸挿入時の苦痛も軽減」や新聞多数紙にも取り上げて頂きました。【DREAMSCOPEメディカルWEBセミナーでも配信中です

 2011年7月よりドイツ、Heidelberg大学Salem Medical Centerに客員教授として3カ月間出張し、大学本院を含めた3施設で講演と技術指導を行い、100例以上の大腸内視鏡検査を私自身も施行しました。
ドイツはアメリカ同様麻酔をして大腸内視鏡を施行しています。また日本と異なり70%の患者がS状結腸憩室を持つことを含め検査前の洗腸に問題があります。早速「浸水法」を導入してくれたDr達から「簡単」「視野が改善する」「麻酔量を著しく減らせる」とご評価頂きました。滞在中に新聞の取材を受けております。

 滞在中に開催されたドイツ内視鏡学会でも「浸水法」関連の挿入法の発表があり、挿入法の工夫で麻酔の見直しが行われる気運があります。

 「浸水法」は麻酔が必要ないため緊張で腸管運動が出現する過敏性腸症候群の腸管運動評価が可能です。また「腸管のらせん」に合わせて捻り操作で挿入するため、腸管形態を評価することも可能です(ご希望に応じて、検査直後にCTコロノグラフィーを撮って腸管「立体」形態の客観的な評価もできます)。

 癌や炎症だけを観察していたのがこれまでの大腸内視鏡検査でしたが、「浸水法」による無麻酔大腸内視鏡で排便障害の原因となりうる「腸管運動や腸管形態」をあわせて評価できるようになりました。もちろん麻酔自体のリスクもありません。

 また腸管形態異常からこれまで大腸内視鏡挿入が困難だった方も、先端柔軟大腸内視鏡PQ260を「浸水法」で運用することで従来では考えられなかったほど容易かつ苦痛なく検査可能となっております。

一年ぶりに大腸内視鏡を握る横山先生に「浸水法」で検査を受ける水上
(ダイジェスト動画 2倍速です)

外来受診のご案内

腹部を水上自身が圧迫して内視鏡挿入を補助しています。
もちろん無麻酔でしたがPQ260を使ったこともあり痛みどころか内視鏡がどこにあるのかすらわかりませんでした。
これまで術者が1年ぶりの検査で「全く痛くない」ということは考えられませんでした。挿入法と機器の進歩の成果と考えます。

 大腸癌を心配されている方、これまで大腸検査で「異常がない」と言われたが排便障害に悩んでいる方の受診をお待ちしております。

                                                     内視鏡センター 水上健

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