久里浜医療センター

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苦痛の少ない大腸検査へのさらなる取り組み

大腸内視鏡(大腸鏡)検査ほど、「苦しいのではないか、痛いのではないか」と患者様に懸念を持たれる検査も少ないと思います。私たちは苦しくない大腸内視鏡検査には3つのキーワードがあると考えています。
1. Manipulation:「大腸内視鏡操作」、手先の器用さです。これには「天賦の才、ゴッドハンド」といったものもありますが、我々はたゆまぬ努力でManipulationを高める必要があります。
2. Method:「大腸内視鏡挿入法」です。従来の大腸内視鏡は左側臥位で送気をして挿入していたため腸管が伸展・緊満して挿入困難と苦痛を招いていました。我々は腸管容積の変動が少ない「浸水法(Mizukami T. Dig Endosc 2007; 19: 43-48.)」を開発することで腸管を伸ばさず「痛み自体を起こさない」無麻酔大腸内視鏡挿入を可能としました。本法はアメリカやヨーロッパを始め国内外で導入されています。
3. Material:「内視鏡」、大腸内視鏡自体の挿入性能です。「弘法筆を選ばず」とは昔からよく言われるたとえですが、実際の弘法大師は「筆を選びに選び抜いて」いたそうです。どの世界でも一流の職人は道具にもこだわります。我々も内視鏡の特性を把握してこだわる必要があると考えています。私たちはOLYMPUS、FUJIFILM、PENTAXの国内外で使用されているほぼすべての大腸内視鏡を長期間試用しそれぞれの利点・欠点を検討しぬきました。

内視鏡評価項目には以下の3つがあります。
   ■ 内視鏡の曲げ剛性:内視鏡のしなりです
     硬いと腸管を短縮してまっすぐ維持するのに有効で、ループを作らず挿入する方法に向いています。
     柔らかいと曲がったところを通過しやすく、痛みが少ないですが腸管を短縮するのは困難です。
   ■ 捻り剛性:捻り操作が先端に伝わるか
     硬いと大腸の深いところでの操作が精密にできます。
     柔らかいと腸が伸びてループを描いてしまったときにまっすぐに直しやすい。
   ■ 可撓管(曲がるところ)手前の回転半径:小回り性能です。
     大きい⇒ヘアピンカーブのように曲がったところは通過しにくく痛みが強くなります。
     小さい⇒ヘアピンカーブのように通過しにくいところを苦痛なく通過できます。

「曲げ剛性」と「捻じり剛性」は最近の内視鏡はバランスが取れており、「曲げ剛性」に関しては可変機構を持つものあります。ただこの2つの要素では「挿入困難例」の挿入性や疼痛を劇的に改善することはできませんでした。

  これまでは手元のレバーで曲がる部位「可撓管」の回転半径の小ささが重要とされていました。実は現在、世界で使用されている大腸内視鏡の「可撓管」の回転径は約6cmでほぼ同じです。それにも関わらず機種によって挿入性能や疼痛に違いがあることの原因は解明されていませんでした。 

  新しい先端柔軟構造内視鏡2層成形」のFUJIFILM WM3「受動湾曲」OLYMPUS PQ260の登場で実は「可撓管の回転半径」ではなく「可撓管手前の回転半径」がとても重要であることが判明しました。

  我々は挿入困難例の腸管形態をCTコロノグラフィーで立体的に検討していますが、どのような挿入法を使っても通過が困難で疼痛を引き起こす症例は直腸S状結腸の移行部や脾湾曲(左上腹部に位置します)などで腸管がヘアピン状に屈曲した部位であるということが判明しています。

  同部位のヘアピン状屈曲は手元のレバーでおもいっきり大腸内視鏡先端を曲げて屈曲を超え、その状態で大腸内視鏡を押し込むしかありません、「ゴッドハンド」や「優れた挿入法」でもそれは同じです。そしてそれは「ステッキ」と言われる現象(内視鏡先端がステッキのようになり進まなくなる状態を指します)で、これまで痛みなしに通過することは不可能でした。

  ここで我々があまり知らなかった問題がありました。
  レバーで曲がる部位「可撓管の回転半径」と「可撓管手前の回転半径」の大きさは倍ほども違っていたことです。

  もしこの2つの回転半径が同じでならレバーで大腸内視鏡先端が屈曲を超えたあと押し込めばスムーズに痛みなく内視鏡は挿入されていくはずです。しかしながら回転半径が倍ぐらい違うと、せっかく超えた急なヘアピンカーブで「ステッキ」のようにひっかかり、「ごりごり引き伸ばさないと」大腸内視鏡を奥に送り込むことができません。
  道理で屈曲が強い挿入困難例の大腸内視鏡は難しく、痛みが強かったわけです。

 

ちなみに左図の状態で引っ掛かってしまうのを「 ステッキ」と言います

  以下に示すのは大腸内視鏡で非常に高名な数施設で挿入不可能とされて来院された方の腸管形態をCTコロノグラフィーで立体的に示したものです。

高度に屈曲したS状結腸が骨盤下部に位置しており、ヘアピン状屈曲が連続しています。
さすがにこのような腸管形態では「ゴッドハンド」や「優れた挿入法」でも歯が立ちません。

我々は大腸モデルで「従来型大腸内視鏡」と「先端柔軟構造大腸内視鏡」を実験で検証してみました。
まず「可撓管の回転径」は前述のとおり、両者とも6cmでした。「可撓管手前の回転径」は従来型でも苦痛が少ないとされた細径大腸内視鏡のPCF240Iでも6cmありましたが、「先端柔軟構造大腸内視鏡」である2層成型」FUJIFILM EG590WM3では9cm、「受動彎曲」OLYMPUS PCF-PQ260Iでは8cmでした。
大腸モデルの脾湾曲(左上腹部)の屈曲をヘアピン状に設定してその通過状況を検討しました。
従来型に比べると2層成型」「受動彎曲」も脾湾曲を引き伸ばさず、スムーズに通過するのがわかりました。写真を示します。

  白丸の部分が脾湾曲。大腸モデルの設定を「脾湾曲がヘアピン状」に設定します。


従来型では「可撓管手前の回転径」が12cmあり脾湾曲を引き延ばします



「2層成型」では「可撓管手前の回転径」が9cmで脾湾曲を引き延ばさず通過できます



「受動彎曲」では「可撓管手前の回転径」が8cmで脾湾曲を引き延ばさず通過できます


  脾湾曲を通過した後のヘアピンカーブの状況を見ていただくと、2層成型」「受動彎曲」など先端柔軟大腸内視鏡は腸管の引き延ばしが少ないのがお分かりになるかと思います。

  ただOLYMPUS PQ260に限っては曲げ剛性が非常に低いので長い腸管をたたんで真っ直ぐに維持できないという欠点があり、我々は腸管容積を変動させない「浸水法」を用いて克服しておりますが、従来の送気での大腸内視鏡挿入法では「大腸の奥まで入らない」「大腸の奥では操作が効かなくなる」などの問題点がありました。
(FUJIFILM 大腸内視鏡や新世代のOLYMPUS大腸内視鏡では手元の曲げ剛性が確保されているので問題はありません)

  先ほど提示した、「非常に高名な数施設で挿入不可能とされて来院された方」の大腸内視鏡はOLYMPUS PQ260を「浸水法」で運用することで麻酔なしに苦痛なく挿入することができました。 このことはManipulation(大腸内視鏡操作)、Method(大腸内視鏡挿入法)、Material(内視鏡)の協調が重要だということ示していると思います。

  私は3か月間ドイツで大腸内視鏡を100例以上施行しましたが、とてもびっくりしたことがありました。
  これまで私は大腸内視鏡挿入法に携わる者として腸管形態を実際に把握すべく、慶應義塾大学解剖学教室の今西准教授と腸管形態を献体での検討を行っていましたが、そこで得られた結論は「教科書に載っている腸管形態は誰が決めたのだろう?」ということでした。
  というのは、30例の腸管形態を拝見したのですが教科書通りの腸管形態を持つ方はほとんどいなかったのです。ところがドイツで100名の大腸内視鏡検査をし、消化器科や放射線科のProfessor達とディスカッションしてわかったのは、欧米の人間の腸管形態は教科書通りがほとんどだということです。なるほど教科書は「欧米の先生が書いた」のでした。
  日本人の腸管は欧米人の腸管に比して、不規則に捻れ・屈曲し・長い傾向にあります。このことは慈恵医大の先生が日米の腸管形態をCTコロノグラフィーでも証明しています。私もストレスの関係のない過敏性腸症候群や排便障害で高頻度に腸管形態異常が見いだされることを報告しています(水上健、鈴木秀和、日比紀文。過敏性腸症候群(IBS)における大腸内視鏡検査−運動異常型(ストレス型)IBSと形態異常型IBS− 消化器心身医学2010; 17(1): 33-39.)。

  ちなみに日本と違って欧米では2層成型」「受動彎曲」などの「先端柔軟大腸内視鏡」は驚くほど興味をもたれません。麻酔を使うこともありますが、日本人に比べて非常に容易なこともあるのではないかと思います。
  我々はManipulation(内視鏡操作)、Method(挿入法)、Material(内視鏡)の協調を大事にして大腸内視鏡検査にあたっています。 これまでの検査で疼痛が強かった方、検査が不可能だった方、原因不明の排便障害の方のご受診をお待ちしています。

                                                            内視鏡センター 水上健

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