久里浜医療センター

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患者様とともに進化するIBS・便秘外来

IBSや便秘は他の疾患に比べても患者様が非常に多く、生活の質に多大な影響を与える疾患ですが、命にかかわらないことから大腸検査に携わる医師が興味を持たない不幸な疾患でした。
そのためIBSや便秘は大腸検査で異常がない(≒腫瘍や炎症がない)ものとされ、患者様が非常に多いのにもかかわらず他の疾患と比べて診断や治療の進化はとても遅いものでした。

当院は国内外のRCTで苦痛軽減効果が報告されている大腸内視鏡挿入法「浸水法」を開発しました。
複雑な腸管形態の方では検査自体が難しいとともに痛みを伴いがちでしたが、「先端柔軟大腸鏡」の「浸水法」による運用で無麻酔でも痛みがほとんどない検査が可能となりました。

麻酔をしない大腸内視鏡検査では検査中に患者様とお話ができます。
検査中のお話というとどうしても便通関連のことになり、その時間は検査が難しければ難しいほど長くなります。

無麻酔で検査をしていたことで、これまで患者様からIBSや便秘の内視鏡診断や治療へのヒントを多くいただきました。

  1. 内視鏡を入れるのが大変な人は便を出すのも大変:
    検査を難しくしている「教科書と異なる複雑な腸管形態」が「ストレスの関与がないIBS患者」や「腹痛を
    伴う便秘患者」のほとんどに存在することがわかりました。
    また「ストレスが関係するIBSや便秘」の方では鎮痙剤が効かない腸の動きが内視鏡の挿入を阻害し、
    リラックスするとその腸の動きが消えることがわかりました。


  2. スポーツマンにIBSや便秘は少ない、が、スポーツをやめると多い:
    複雑な腸管形態を持つ方であってもスポーツマンではIBSや便秘がほとんどなく、運動量が少ない人やスポーツをやめた人がIBSや便秘になっていること、スポーツの種類としてテニスやゴルフなど体を捻る運動が効果的で、一般に行われているウォーキングやジョギングは効果があまりないことがわかりました。

  3. 内視鏡を入れるときの工夫が便を出すときの工夫になる:
    内視鏡を入れるときの工夫におなかを押す「腹部圧迫」があります。おなかを押して曲がった腸を抑えることで曲りを一時的に矯正して内視鏡を通りやすくする方法です。
    これを「ストレスが関与しないIBSや腹痛を伴う便秘患者」の方に試してもらったところとても効果があったと報告を多くいただき、内視鏡を入れるときの工夫が便を出す工夫になることがわかりました。


  4. メディアの力@:「ねじれ腸マッサージ」の放映と反響
    「たけしのみんなの家庭の医学」で腹痛を伴う便秘の原因に日本人特有の腸管形態「ねじれ腸」があること、内視鏡を入れるときの工夫を応用した「ねじれ腸マッサージ」の報告をしました。
    放映直後からネットの反響はすさまじく、翌日には病院に「ものすごく便が出たのだが大丈夫か?」などの電話がありました。

  5. 「ねじれ腸マッサージ」放映後のIBS便秘外来の変化:
    日本人の腸管形態は人それぞれで非常にバリエーションに富みます。一つの方法ですべてカバーするのはもちろん不可能で「ねじれ腸マッサージ」は約8割の方をターゲットにしたものでした。
    メディアの力はすさまじいものがありました。放映後にいらっしゃる患者さんは「マッサージが効果ありました」と教えに来てくれる人を除くとほとんどが「ねじれ腸マッサージ」の効果がない腸管形態「落下腸(総腸間膜症)」になってしまったのです。
    もともと腸管形態異常のうち「落下腸」は2割程度、その方たちが外来のほとんどを占めるような驚くべき事態になってしまったのです。


  6. メディアの力A:「落下腸マッサージ」の放映とその後
    あらたに「落下腸」の「腹痛を伴う便秘の方」を対象にした「落下腸マッサージ」が放映されました。今回も放映後のネットの反響もすさまじく、「ねじれ腸」より少ないとはいえ「落下腸」で腹痛を伴う便秘やIBS になっている方の多さに改めて気づかされました。

  7. 「落下腸マッサージ」放映後のIBS便秘外来の変化:
    ただ驚いたことに久里浜の外来に来る患者さんは一時的に減ってしまいました。
    「マッサージが凄く効いた、これまで検査が痛くて大変だったので検査をしてほしい」といらっしゃる方たちを除くと「ねじれ腸マッサージ」「落下腸マッサージ」が効く方たちが来なくなってしまったのです。
    現在「ストレスが関与しないIBSや腹痛を伴う便秘」の方でいらっしゃる方たちは確かに「ねじれ腸マッサージ」や「落下腸マッサージ」が効きにくい特殊な腸管形態で形態に合わせたオーダーメードの方法を指導しております。

  8. メディアの力B:従来の治療が効かない「ねじれ腸や落下腸以外」の便秘・IBS患者様の来院
    「ねじれ腸マッサージ」「落下腸マッサージ」が効く方たちは減ってしまいましたが、TVや本などのメディアから当院を知っていただいた「ねじれ腸や落下腸以外」の便秘やIBSの方が多くいらっしゃるようになりました。

  9. 痛みがない便秘「機能性便秘」:
    「ねじれ腸マッサージ」「落下腸マッサージ」が効く方たちが減った代わりに「痛みがない便秘」「機能性便秘」の方たちたちが増えました。
    当然のことですが「痛みがない」以上、マッサージやエクササイズはあまり効きません。

    「便秘のその他の原因」であるストレスや食事・生活・排便習慣、刺激性下剤の不適切な使用について考えさせられ、「便秘」の病態の複雑さ・難しさについて教えられるともに適正な指導で刺激性下剤はほとんどの方で減量・中止できることがわかってきました。


  10. 便がない便秘「幻の便秘」:
    これまでの治療が全く効かない患者様の中には生活変化、ストレスなどで一日あたりにできる便の量が著しく減り、おなかの中の便が少なすぎるために便を出せない「幻の便秘」の方たちがいらっしゃることがわかりました。
    お腹の中は外から見えないというまさに盲点で、腹部X線でご自身のおなかの状態を認識することが一番の治療になることがわかりました。

  11. 新たなるIBSの原因「胆汁性下痢(Bile Acid Malabsorption: BAM)」:
    ストレスが関与しないIBSの方では「胆汁性下痢(BAM)」の方たちが増えてきました。
    胆汁性下痢の方たちは病気としての絶対数が少ないため外来にはほとんどいらしていなかったのですが、メディアや本のおかげで来院される方が増えてきました。
    胆汁性下痢には現在とても有効な薬がありますが、「ねじれ腸」「落下腸」と合併していることが多く、薬とエクササイズを併せて指導しております。

  12. 患者様の体験談やメディアの反響:小児患者の診療
    当院のHPにはIBS患者や便秘患者の方の治療体験記を掲載しています。
    体験記をご一読いただけるとお分かりになるかと思いますがIBSや便秘は「腸管形態」や「ストレスに対する腸管運動」など生まれつきの体質です。
    実際に統計を取ったところ当院の成人患者の40%は16歳未満の小児期の発症でした。

  13. 小児患者の診断と治療:
    最近は治療体験談やメディアを見てくださったご両親が小さなお子様を連れていらっしゃることが増えてきました。
    小児期から数十年も病気に悩まされている成人の治療がうまくいくのであれば発症まもない小児の患者はより容易なはずです。
    実際に成人に比べると驚くほどの回復力で、早期診断・早期治療の重要性を再認識させられました。

    2015年春には日本小児科学会総会で「成人治療の小児への応用」を報告しております。

当院IBS・便秘外来は患者様から教えていただいたことに真摯に取り組んで進化してきました。
今後も患者様の声を真摯に受け止めIBSや便秘の効果的な診断・治療方法の開発と普及に鋭意取り組んでいきます。

IBS・便秘外来 水上健

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