久里浜医療センター

WHO (世界保健機関) アルコール関連問題研究・研修協力センター

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1. アルコールの基礎知識

アルコールと年齢

過去の多くの飲酒実態調査から男性の場合は若年者や高齢者より中年の世代が最も飲酒量が多いことが示されているなど飲酒は年齢の影響を強く受けます。
飲酒後に血中のアルコール濃度が低下する割合(消失速度)は高齢者と若年者で大きな違いはないとされています。しかし、高齢者の場合には若年者と同じ量の飲酒でも血中のアルコール濃度が高くなるといった違いが知られています。また、若年者の場合には無謀な飲酒につながりやすい、飲酒を始める年齢が早いと将来のアルコール問題につながりやすいといった点が指摘されています。

1. 高齢者は酒に弱くなる
25歳から60歳の間に身体に占める脂肪の割合は倍増して、特に女性では50%に達するとされています。脂肪を除いた体重は減少して脂肪が増えるために身体に占める水分の割合は加齢とともに減少します。アルコールは体内では水に溶けやすいのですが、脂肪には溶けにくいという性質があり、そのために体重あたり等しい量のアルコールを飲んだとしても飲酒後の血中アルコール濃度は若い世代よりも高齢者で高くなってしまいます1)。また、口から飲んだアルコールは胃に貯留している間に一部が分解されますが、加齢とともに胃の粘膜が老化すると粘膜に存在するアルコール脱水素酵素というアルコールの分解酵素が失われるため、胃のアルコールの分解が悪くなることも高齢者で血中濃度が高くなる原因の一つと考えられます。その他、習慣的に飲んでいると次第に同じアルコール量では酔わなくなる、いわゆる耐性という現象がアルコールにはありますが、高齢者では耐性が形成されにくいとされています。さらに、同じ血中アルコール濃度でも若年者と高齢者では高齢者の方が酔いの度合いが強くなることも知られています1)。以上の点から、加齢によって“酒に弱く”なりますので、高齢者は飲酒に対する注意が必要です。

2. 若年者の飲酒
飲酒経験の少ない若い頃に飲みすぎて後悔した経験のある方は少なくないかもしれません。一般的にはその理由として飲酒経験が乏しくてアルコールとの付き合い方がわからないからと言われますが、この点について調べた研究を紹介します。人の思春期にあたる若いラットと大人のラットでアルコールに対する感受性を比べた実験です。その実験によると若いラットではアルコールに対する感受性が低く、運動機能の低下、対人関係への影響、鎮静効果などのアルコールによる影響および二日酔いの症状に大人のラットより鈍いという結果でした。これを人に置き換えると、大人の場合はこのような症状を感知して適当なところで飲酒を切り上げることができますが、若年者ではそのようなフィードバックがかからないので度を過ぎると考えられます2)。東京消防庁の急性アルコール中毒による救急搬送の統計(www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/kyuu-adv/201112/chudoku.html)によりますと、平成22年に搬送された人の中で10歳代と20歳代の占める割合は53.9%と若い世代が過半数を占めていました。このように若い人は飲みすぎていることを自覚できずに急性アルコール中毒を起こす危険性が高いと言えます。
ご存知のように日本では法的に飲酒が認められるのは20歳以上ですが、実際は未成年の時から飲酒を始めている人は少なくありません。飲酒を始める年齢によってその後の人生にどのような影響があるのでしょうか。スウェーデンで行なわれた調査では、18歳〜19歳時点の1週間当たりの飲酒量とその後の15年間の死亡率が比例しており、死因の多くが暴力によるものでした3)。このような若者の飲酒と事件・事故の関連を示す論文・調査は数多くあります。また、別の調査では飲酒を始める年齢が若いほど、将来のアルコール依存症の危険性が高くなるという報告4)もあります。未成年者の飲酒は法律によって禁じられていますが、その他にも@急性アルコール中毒の危険性が高い、A骨の成長が悪くなる、B性成熟が遅れる、C学習成績が低下する、D脳が萎縮する、E飲酒による事故や大量飲酒などの危険な行為に走りやすい、F依存症になる危険性が高くなり、さらに短期間で依存が形成される、G他の薬物への登竜門になる、といった理由から未成年者は飲酒してはいけないのです。

参考文献

  1. 樋口 進ほか. 健康日本21推進のためのアルコール保健指導マニュアル. 社会保険研究所, 東京, 2003.

2) Spear LA, Varlinskaya EI. Adolescence: Alcohol sensitivity, tolerance, and intake. Recent Developments in Alcoholism 17: 143-159, 2005.
3) Andreasson S, Allebeck P, Romelsjo A. Alcohol and mortality among young men: longitudinal study of Swedish conscripts. BMJ 296: 1021-1025, 1998.
4) Grant BF, Dawson DA. Age at onset of alcohol use and its association with DSM-IV alcohol abuse and dependence: results from the National Longitudinal Alcohol Epidemiologic Survey. J Subst Abuse 9: 103-110, 1197.

著者

松下 幸生
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