久里浜医療センター

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1. アルコールの基礎知識

酔い方の異常

誰でもお酒を飲めば酔いを感じます。飲酒量に応じて酔いが進み、酩酊と言われる一種の急性中毒症状を示します。酩酊の大半は飲酒量に応じた単純酩酊ですが、飲酒量に対応しないような、異常な酔い方をする場合があります。これを異常酩酊といいます。
 我が国で利用されている代表的な酩酊分類として、Binderの分類1)に基づいた三分法があります。そこではまず単純酩酊と異常酩酊とに分けられ、異常酩酊はさらに複雑酩酊と病的酩酊とに分類されます。

1. 単純酩酊
普通酩酊、正常酩酊、尋常酩酊などとも呼ばれる、通常のタイプの酩酊です。酩酊が進むと、精神や身体の活動に変化が生じます。体質、体格、年齢などによって酩酊の程度は変わり、主にアルコールの中枢神経への作用によって出現するといえます。これはアルコール血中濃度によって決まるため、酔いの程度も血中濃度と相関します。血中濃度(%)が0.02〜0.04:爽快期、0.05〜0.10:ほろ酔い期、0.11〜0.15:酩酊初期、0.16〜0.30:酩酊極期、0.31〜0.40:泥酔期、0.41〜:昏睡期、というのが血中濃度と酔いの程度の目安です。標準的には日本酒3合程度飲酒すると酩酊初期になり、まともに歩けず、嘔気や嘔吐も出現します。こうした通常の酩酊を呈するものを単純酩酊といいます。

2. 異常酩酊
1)複雑酩酊
飲酒にともない気分が易刺激的になり、著しい興奮が出現し、持続時間も比較的長いタイプの酩酊です。個人により経過が定まっているので、病的酩酊よりも飲酒試験での再現性が高いと言われています。コンプレックスが現れやすく、時に短絡的、暴発的となりますが、状況に対する理解(見当識)は保たれ、行動には一応のまとまりがあります。錯覚や被害的な言動がときに生じますが、真の意味での妄想や幻覚は出現しません。
2) 病的酩酊
複雑酩酊がその人の持っている気分の量的な増加を特徴とするのに対し、病的酩酊は飲酒量が少なく、アルコール血中濃度が低くても記憶をなくし、見当識(時と場所、自分が今何をしているかなどの基本的な状況把握)を障害します。
身体的には麻痺もなくまとまった行動ができますが、精神的には不安や興奮、ときに幻覚妄想状態をきたすなど、不安定な状態です。また場合によっては暴力行為などの、周囲に理解できない突発的な行動をとります。

 病的酩酊は、出現のメカニズムなど、多くは分かっていません。せん妄、失見当職(見当識を失うこと)、著しい興奮などか?みられるため、アルコール精神疾患としてあつかいます。ICD-10(国際疾病分類第10版)2)では単純酩酊、異常酩酊といった三分法による区別はなく、急性中毒の範ちゅうとして、せん妄をともなうもの(F10.03)、知覚変容をともなうもの(F10.04)、昏睡、けいれんをともなうもの(それぞれF10.05、F10.06)、病的中毒(F10.7)と分類されています。F10.7の病的中毒はアルコールのみに適用され、Binderの病的酩酊と同様、ほとんどの人で中毒を生じない量のアルコールを飲酒した直後に、酒を飲んでいないときには通常見られない攻撃性と、しばしば暴力的行動が突然出現する、とされています。病的な酩酊をきたす人は繰り返す場合が多く、断酒を目指すことがすすめられます。

参考文献
1) Binder H: uberalkoholisheRauschzust¨ande. Schwiz. Arch NeurolPsychiat 25: 209-228, 36: 17-51, 1935 (影山任佐訳・解説:精神医学 24:855-866, 999-1007, 1125-1140, 1982)
2) WHO: The ICD-10 Classification of Mental and Behavioral Disorders; Clinical Descriptions and Diagnostic Guidelines, World Health Organization, Geneva, 1992 (融道男, 中根允文, 小宮山実監訳: ICD-10 精神および行動の障害-臨床と診断ガイドライン, 医学書院, 東京, 1993 )

著者
佐久間寛之



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