久里浜医療センター

WHO (世界保健機関) アルコール関連問題研究・研修協力センター

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2. 飲酒と健康問題

アルコールと糖尿病

適度な飲酒はインスリン感受性を高めたり、善玉のHDLコレステロールを増やして動脈硬化を予防したりして、糖尿病やその合併症の発症に影響すると考えられています。20のコホート研究のメタ解析では、禁酒者ではないもともと飲まない人を基準として、男女とも飲酒量は糖尿病の発症にU字型の影響、すなわち適度な飲酒は糖尿病の発症を抑制し、多量飲酒は発症を促進することが報告されています。男性では1日22 gエタノール(ビール500 ml相当)で13%の糖尿病発症リスクの低下があり、60 g以上でリスクは上昇しました。女性では24gで40%のリスク低下があり、50 g以上でリスクは上昇しました。しかし、一般論として適度な飲酒量を守れる人は食生活、喫煙、運動などのその他の生活習慣も健康志向が高いひとが多いことが知られており、その影響もあるかもしれません。アルコール飲料は、たとえば5%ビールであればエタノール(1g当たり7.1キロカロリー)と糖質とで100ml当たり概ね40キロカロリーに相当しますので、食事療法のカロリーに組み込んで計算すべきです。ただし、そのうちのエタノールの28キロカロリーに関しては、飲酒でビール腹になるひととならないひとがいるように、そのエネルギー利用効率の個人差が大きいと考えられています。


アルコール依存症患者さんでは、一般の糖尿病に加えて、アルコール性臓器障害(肝障害・膵障害・筋障害)に伴う糖尿病を高頻度で発症しますが、アルコール依存症に糖尿病が合併した場合はこの糖尿病は一般の糖尿病とはまったく違う恐ろしい病気に変わります。図1は久里浜医療センターを退院した糖尿病を合併したアルコール依存症患者さんの生存率です。断酒できなければ数年で死亡する可能性が極めて高く、その生命予後は肝硬変の患者さんと同等です。断酒できれば、一般の糖尿病と同じように長期的に合併症を予防することを目標とした慢性疾患です。断酒できないアルコール依存症患者さんでは、臓器障害の増悪に伴う糖代謝の増悪、食事療法の放棄、低血糖・ケトアシドーシス・極端な高血糖・脱水・免疫不全を起こし、自宅で死亡して家族が発見するという最悪の結末が多く見られます。断酒できずに通院している患者さんでは、インスリンや内服薬で治療していて食事量が減って低血糖になった際に、意識障害直前の30 mg/dlの血糖値でも空腹・脱力・発汗・動悸などの低血糖症状が出ないことを多く経験しますが、断酒した患者さんの多くは60-70 mg/dlの低血糖で自覚症状に気づくようになります。またアルコールの神経毒性と重なるため、糖尿病性末梢神経障害が早期から悪化し左右対称の足先のしびれを訴えますが、断酒により改善するのが一般的です。肝硬変などの肝障害に伴う肝性糖尿病では、断酒継続で肝再生が起こるため、糖尿病の劇的な改善もしばしば見られます。久里浜医療センターではこのような知識を知ってもらうためのアルコール依存症患者さんの糖尿病教室を行っています。

参考文献
1) 丸山勝也, 横山 顕. アルコールと代謝疾患−糖尿病, 痛風. アルコール医療入門, pp.41-44, 新興医学出版社, 東京, 2001.
2) Baliunas DO, Taylor BJ, Irving H et al. Alcohol as a risk factor for type 2 diabetes. Diabates Care 32: 2123-2131, 2009.

執筆者
横山 顕

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