久里浜医療センター

WHO (世界保健機関) アルコール関連問題研究・研修協力センター

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2. 飲酒と健康問題

アルコールと骨粗鬆症

これまで地域住民の観察研究で中等量までのアルコールの飲酒は骨密度・骨折に保護的に作用することが報告されております。この現象は、アルコールに骨を丈夫にする作用があるとういうより、飲酒に伴う間接的な作用が想定されております。すなわち「節度ある適度な飲酒」が許される状況とは身体的にも心理的にも社会的にも健康な環境にある証といってよく、骨環境にとっても健康な状態であると考えられます。一方、過量の飲酒は原発性骨粗鬆症のリスク因子であり続発性の骨粗鬆症の原因の一つです。アルコール依存症者は概して低栄養で転びやすく、骨折ともなれば依存症からの脱却をますます困難にするという悪循環を生み出します。

1. カルシウム代謝と骨粗鬆症の機序
骨粗鬆症は、骨量の減少を来たす疾患ですが、この主要な基質がカルシウムです。カルシウム摂取は最低でも1000−1300 mg/day必要とされていますが、日本人ではその摂取不足が指摘されております。食物中からのカルシウムは腸管から吸収され、ビタミンDがその作用を促進します。実は、骨芽細胞と破骨細胞の働きにより骨は常に新陳代謝されています。骨はカルシウムの貯蔵庫として働き、副甲状腺ホルモンとビタミンDが大事な役割をしています。例えばカルシウムの摂取不足が続くと、副甲状腺ホルモンの機能は亢進し、骨からのカルシウムの引き出し、腎臓での排出の抑制、を促し血中カルシウム濃度を一定にするように働きます。骨密度は20−30歳がピークで、後は年齢に伴って低下します。その低下には、体質・運動・カルシウム摂取・リスク因子(栄養・アルコール摂取・喫煙)などが関与します。

2. アルコールと骨粗鬆症(図)
過量のアルコール摂取は骨芽細胞の活性を抑制します1)。また、カルシウムの吸収の場である消化管を障害し(栄養の吸収阻害・下痢の促進)、間接的には食物摂取不足により骨密度の維持に必要なビタミンDや微量金属の摂取が低下します。その他、身体活動の低下が骨への負荷低下を招き、部屋にこもったりすれば日光に当たらないことによるビタミンD活性阻害を起こします。アルコール依存症者の骨密度は平均で同年齢健常者より10歳高齢にシフトします。彼らの骨密度低下因子は年齢, 連続飲酒、体の活動度、うつ病、肝硬変、認知症の有無ということがわかっております。

3. アルコール依存症者の骨粗鬆症治療
断酒により、骨芽細胞の活性はただちに戻ります。従って、効果的にリハビリをすると骨の強度が回復します。当院のアルコール依存症者が、入院の上3ヶ月の断酒プログラムを行うと、かかとの骨の強度が10%上がります。一方、3ヶ月では腰椎の骨の強度は十分に良くなりません。これはアルコール依存症者では体全体のカルシウム量が依然少ないため、破骨細胞の働きが活発なままで、使わない骨まで強くすることができないのです。従って、長期にわたってリハビリをしながらカルシウムを十分に摂る必要があります。リハビリに加えて、骨芽細胞の働きを抑えるビスホスホネート系薬剤(ミノドロン酸など)を使用すると、腰椎の骨密度を増加させることがわかっております。また当院ではビタミンD製剤も使用します2)。

4. 骨粗鬆症と酒との上手な付き合い方
骨粗鬆症の予防は30歳台から始まります。骨密度の低下を最小限に抑えることが大事です。飲酒は適切な量にとどめ、十分な栄養を摂取し、何より運動をして骨に負荷をかけることが重要です。骨粗鬆症の好発年齢になって骨密度を元のレベルに戻すのは困難であり、飲酒や喫煙などのリスク因子を排除しつつ、薬剤での治療開始を遅らせるよう骨を健康に保ちましょう。

参考文献
1) 松井敏史, 横山 顕, 松下幸生ほか. アルコール依存症患者における骨密度悪化因子と断酒療に伴う骨改善効果 Osteoporosis Jpn 17: 708-713, 2009
2) 松井敏史, 横山 顕, 水上 健ほか. 男性アルコール依存症患者における骨粗鬆症の治療: ビスホスホネート製剤による介入試験と骨代謝マーカーに与える影響 Osteoporosis Jpn 19: 38-45, 2011.

著者
松井 敏史

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