久里浜医療センター

WHO (世界保健機関) アルコール関連問題研究・研修協力センター

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5. アルコール依存症

抗酒薬について

抗酒薬は、アルコール依存症の再発予防策の一環として補助的に使用する薬です。治療の基本は断酒を継続することであり、抗酒薬の服用は、これを実践するための三本柱の一つとされています。断酒継続の三本柱は抗酒薬のほかに、通院治療と自助グループへの参加です。

1.種類

我が国では現在、ジスルフィラム(商品名:ノックビン)とシアナミド(商品名:シアナマイド)が厚生労働省より認可されています。ジスルフィラムは帯黄色粉薬、シアナミドは無色透明の水薬で、ジスルフィラムはシアナミドより効果が遅く現れますが、効果は長く続きます。

2.作用と服用意義

抗酒薬を服用すると、肝臓の分解機能が一時的に低下し、お酒に弱い体質を作り出します。そのため抗酒薬を服用した後にお酒を飲むと、顔が赤くなったり、吐き気や頭痛を引き起こすなどの、つらい思いをします。その症状は人によって差がありますが、ひどい場合には呼吸ができなくなることもあります。
 このような症状がおきるのは、抗酒薬の作用機序が、アルデヒド脱水素酵素(特にALDH2)のはたらきを抑制するからです。通常、体内で吸収されたアルコールがまず肝臓で分解されると、不快な症状の原因となるアセトアルデヒドが発生します。さらに肝臓内にあるアルデヒド脱水素酵素により体に害のない物質に処理されます。しかし、抗酒薬を服用するとこの酵素の働きが弱まるため、アセトアルデヒドが分解されにくくなり体にたまって、不快な症状を引き起こします。
 アルコール依存症では、時として強烈な飲酒欲求が起きます。しかし、抗酒薬を服用していると、上記のような不快な気分になるのを恐れ、結果として飲酒を抑えることにつながります。抗酒薬により、自分の体がアルコールを受け付けない状態になっていることを自覚していれば、飲酒欲求は自然に下がるのです。そのため抗酒薬は、“断酒のためのお守り“とよく言われます。推奨される服用方法は、一日一回起床時です。起きてすぐに抗酒薬を服用することで、今日一日の断酒を決意します。特に家族や同居人、友人の前で服用すると、より効果的です。
 しかし、抗酒薬そのものは、お酒を飲みたいという飲酒欲求や連続飲酒といった飲酒のコントロール障害を抑えるわけではありません。したがって通院治療や自助グループでの活動などと合わせて、総合的に再発予防に取り組むことが大切です。

3.副作用

ジスルフィラムの代表的な副作用は、肝障害と精神症状です1)。肝障害はまれに重篤な場合があるので抗酒薬服用中は肝機能検査を受けることが勧められています。精神症状は投与量の多い場合の副作用で、ごくまれにしか認められません。
 シアナミドの副作用としては皮疹が比較的よく認められます。当院では、シアナミドを服用している患者さんの肝細胞にすりガラス様封入体が出現し、肝障害の副作用の発現率が高かったことを報告しています2)。そのため当院では、ジスルフィラムの処方が多く出されています。

4.抗酒薬を服用するときの注意点

アルコールを含む食品・飲料・化粧品・洗口液などを使用すると、お酒と一緒に飲んだときと同じ作用が起きる可能性があるので、注意する必要があります。具体的には、ブランデー入りケーキや洋菓子、ウイスキーボンボンなどのお酒の入ったチョコレート、酒粕で作られた漬物類、栄養ドリンク剤、胃腸系のドリンク剤などです。下の表に、市販されている医薬品や飲料についてアルコールを含むものを表示しています。例えばA社栄養ドリンク剤であれば、一本 (20mL) に含まれるアルコール量を瓶ビールに換算すると31.6mLとなり、これはビールを約一口飲んだ量に相当します。



商品名
容量
アルコール量
1瓶のビール(5%)換算量
(mL)
(mg/mL)
(%)
(mL/瓶)
A社栄養ドリンク剤
20
78.5
7.9
31.6
B社栄養ドリンク剤
100
12.7
1.3
26.0
C社清涼飲料水
120
7.8
0.8
19.2
D社液体胃腸薬液
20
34.9
3.5
14.0
E社液体胃腸薬液
25
27.4
2.7
13.5
F社栄養ドリンク剤
100
3.4
0.3
6.0
G社清涼飲料水
140
0.8
0.1
2.2

(資料をもとに著者作成, 2008)

5.今後期待されるアルコール依存症の治療薬

アルコール依存症治療薬として、ジスルフィラムやシアナミドとは異なる作用を持つ、アカンプロセートという薬があります。中枢神経に作用して飲酒欲求そのものを抑えます。一部の海外の国では実用化されていますが、日本では現在承認申請中です。審査が順調に進めば、数年後には使用できるといわれています。アカンプロセート以外にも同様の薬の治験が検討され始めており、今後アルコール依存症治療薬の種類が増える可能性もあります。4)

参考文献

1) Malcolm R, Olive MF, Lechner W. The safety of disulfiram for the treatment of alcohol and cocaine dependence in randomized clinical trials: guidance for clinical practice. Expert Opin Drug Saf 7(4): 459-72, 2008.
2) Yokoyama A, Sato S, Maruyama K et al. Cyanamide-associated alcoholic liver disease: a sequential histological evaluation. Alcohol Clin Exp Res 19: 1307-1311, 1995.
3) 資料をもとに著者作成, 2008
4) 樋口 進. アルコール依存症から抜け出す本. pp.94, 講談社, 東京, 2011.

著者
小野 麻里子

 

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