久里浜医療センター

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5. アルコール依存症

久里浜版新認知行動治療プログラム(GTMACK)

久里浜医療センター(以下、当院)では従前より酒害教育、病棟全体の集団精神療法を中心とした入院治療プログラムを実施してきました。そして、認知行動療法がアルコール依存症に有効であることが認められるようになったため、2000年には集団認知行動療法を当院の治療プログラムに取り入れました。しかし、その後もマトリックスモデル、変化のステージモデル、パラダイム発展モデルと依存症の心理社会的治療には新しい治療モデルが発表、邦訳されて紹介されるようになり、さらに動機づけ面接法が紹介されるなど治療法には著しい発展がみられました。そこで、当院ではこれらのプログラムを参考に新たな入院治療プログラムの開発に着手することになりました。
まず各プログラムについて勉強会を開いて、医師、看護師、心理療法士、ソーシャルワーカーと多職種でプログラムの検討を行ってきました。そして、それぞれの新しい治療モデルを参考にして治療段階に応じたプログラムを作成し、Group Treatment Model for Alcohol Dependence, based on Cognitive Behavioral Therapy, Kurihama Version (GTMACK)と名付けました。これは認知行動療法をベースとした久里浜版の集団治療モデルという意味です。
このプログラムの特徴は変化のステージモデルやパラダイム発展モデルをベースとして、まず動機づけを中心としたセッションから始まり、具体的な断酒の続け方、失敗してしまった時の対処法など断酒のあり方について具体的に検討して依存症の再発予防を目的としたセッションへと続きます。さらに断酒継続に役立つ生活のあり方を生活のマネージメントという形で参加者や治療者で一緒に考えていきます。
表1に実際のセッション内容を紹介しますが、プログラムは上から順番に進んでいきます。医師、臨床心理士がグループリーダーとなって、看護師がサブリーダーになります。リーダーはプログラムを通して同じ人が担当し、参加するメンバーも最初から同じメンバーです。動機づけ、コーピングのセッションは8回で行われ、医師・臨床心理士が担当します。生活のマネージメントは看護師とソーシャルワーカーが担当します。
動機づけのセッションではスクリーニングテストや診断基準にあてはまる項目を参加者自身が記入して飲酒の問題を認識していただき、入院前の生活がどのような生活だったか振り返って飲酒中心の生活であったことを認識してもらい、飲酒と断酒のメリット・デメリットについて考えていただきます。コーピングではどのような人、物、状況、感情が飲酒欲求の引き金になるか、飲酒欲求にどのように対処するか、どのような行動が飲酒の歯止めになるか、飲酒を勧められた場合や飲まないと気まずい状況をどのように回避するか、もし失敗して飲酒してしまった時にも依存症を再発させないためにはどうしたら良いかといった点について皆さんで考えていただきます。さらに、酒の無い生活を続けるためにストレスへの対処法、余暇の過ごし方、怒りのコントロールといった点について検討します。これらはアルコールとは直接関係がないかもしれませんが、断酒を継続する上で必要なことです。
GTMACKは2012年1月から開始しました。今後、定期的に修正を加えていく予定です。依存症治療の新しいプログラムが参加される方の回復に少しでも役立つことをスタッフ一同願っています。

表1. GTMACKのセッション内容

ステージ
セッション内容
参考モデル
動機づけ 依存症自己診断 変化のステージモデル
飲酒問題の整理 認知行動療法
飲酒と断酒の良い点・悪い点 パラダイム発展モデル
一日の生活を振り返る 変化のステージモデル
将来を考える パラダイム発展モデル
コーピング 引き金と命綱 マトリックスモデル
飲酒欲求に対処する マトリックスモデル
リラプスの予測と防止 マトリックスモデル
社会的圧力の状況 パラダイム発展モデル
再飲酒時の対処法 マトリックスモデル
生活のマネージメント ストレスへの対処 マトリックスモデル
怒りのコントロール マトリックスモデル
楽しみを見つける(余暇の過ごし方) マトリックスモデル

参考文献

  1. 原田隆之:薬物依存症治療に対する新しい方略 : Matrix モデルの理論と実際。日本アルコール・薬物医学会雑誌45,557-568,2010.
  2. Velasquez MM, Maurer GGG, Crouch C, DiClemente CC: Group Treatment for Substance Abuse. A Stages-of-Change Therapy Manual. The Guilford Press, NY, 2001.
  3. ジョージィ・ディスティファーノ、メリンダ・ホーマン:アルコール・薬鬱依存治療・パラダイム発展モデル アルコールや薬物の乱用者・依存者の治療を行うカウンセラーのための臨床実践ガイドライン Montezuma Publishing, San Diego, 2010

著者
松下 幸生

 

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