久里浜医療センター

WHO (世界保健機関) アルコール関連問題研究・研修協力センター

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情報ボックス  飲酒運転対策  

3.運転免許取消処分者講習の新たな講習内容

  近年、飲酒運転を原因とした痛ましい事故が繰り返し発生する中で、飲酒運転に対する社会の関心が高まっています。飲酒運転の基準値が引き上げられたり、罰則が強化されたりするなど、さまざまな対策がとられている一方で、いまだに飲酒運転の根絶には至っていないというのが現実です。飲酒運転の常習者の中には、アルコール依存症者が高い割合で存在していることが明らかになるにつれて、罰則の強化だけで再犯を防ぐことは難しく、常習者に対して飲酒量を低減させるための専門的な取り組みが必要であると考えられるようになってきました。

1.飲酒取消処分者講習
  運転免許の取り消し処分にあった者が免許を再取得するためには、試験を受ける前に取消処分者講習を受講しなければなりません。従来は取り消し処分に至った理由に関わりなく、全員が同じ講習(2日間連続して合計13時間にわたる講習)を受けていました。しかしながら、平成22年からは新たな講習が試験的に設定され、酒酔い運転または酒気帯び運転により取り消し処分を受けた者が対象となる、「飲酒取消処分者講習」が一部の地域でスタートしました。当初は4府県(神奈川県、愛知県、大阪府、愛媛県)で先行実施し、その効果が認められたことから、平成25年4月より全国で導入されることになりました。
  このプログラムは7時間にわたる1日目の講習と、その30日後に行われる6時間の講習から構成されています。この中では、飲酒と運転とに焦点をあてた主な科目として、「ブリーフインターベンション(Brief Intervention:BI、簡易介入)」と「ディスカッション」とが行われています。
  BIは大量飲酒者の酒量を減らす技法として、世界的に広く活用されている方法です(詳しくは情報ボックスの「4. 飲酒問題の早期発見・早期介入」をご覧ください)。写真のようなワークブックを使い、「自分のお酒の飲み方を確認する」「お酒の代謝について理解する」「アルコールの与えるさまざまな影響を認識する」「ついついお酒を飲んでしまう状況で、お酒を飲みすぎない方法を考える」「今後のお酒と運転とについて目標を立てる」といったことを行います。さらに、1日目の講習から30日の間、毎日の飲酒状況を記録し、目標を達成できたかどうかを評価します。

 

  ディスカッションは、全国導入にあわせて新しく設定されたパートです。ここでは、交通事故被害者遺族の手記を読んだり、運転に与えるアルコールの影響を学んだりします。そのうえで参加者同士が意見を交換し、正しい知識を共有することで飲酒運転への認識をあらためさせ、再発防止へと導くことや、遺族の辛さと加害者の後悔を想像させ、飲酒運転の与える影響の大きさに気付かせることを狙っています。

2.久里浜医療センターにおける取り組み
  BIのワークブックとディスカッションの教材は、長年にわたるアルコール医療で培ったノウハウを生かし、当センターと警察庁が協力して作成したものです。医学的なエビデンスにもとづいた内容でありながら、医療の専門家でなくても使いこすことが可能なものになるように、医師・看護師・精神保健福祉士・臨床心理からなるチームを設け、検討を重ねてきました。
  また、コンテンツの作成に加えて、プログラムを担当する教官の育成にも協力しています。実際にプログラムを担当するのは、運転免許センターの警察官と指定教習所の指導員です。みなさん運転を教えるプロではありますが、医療の専門家ではありませんので、アルコール依存症に関する知識や各教材の使用方法を理解していただけるよう、講習会に当センターのスタッフを派遣しています。平成24年は北海道から沖縄まで全国17会場で講習が行われ、1000名を超える警察官・指導員にご参加いただきました(写真は富山県での講習会のひとこまです)。

                                                      著者
                                                      伊藤 満

 

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