久里浜医療センター

WHO (世界保健機関) アルコール関連問題研究・研修協力センター

  • HOME
  • サイトマップ
  • English

アルコール依存症新薬治療

アルコール依存症の新しい治療薬が使用できるようになりました

  

  アルコール依存症の治療は、精神療法、自助グループへの参加、心理社会的な支援など様々な角度からアプローチする必要があります。薬物療法もその一つのコンポーネントとして重要です。従来、我が国では、アルコール依存症の治療薬として抗酒薬のみが使用可能でした。しかし、2013年5月に、実に30年ぶりの新薬として、飲酒欲求を低減させる薬剤であるアカンプロサートカルシウム(商品名レグテクト)が日本でも使用可能となりました。当センターでも、発売よりアルコール依存症治療に導入し、治療成績の向上に役立てています。

アカンプロサート(レグテクト)と抗酒薬の違い

  わが国で従来から用いられてきた薬は、「抗酒薬」と呼ばれる薬です。抗酒薬には、ジスルフィラム(商品名ノックビン)とシアナミド(商品名シアナマイド)の2種類があります。これらの薬剤は、抗酒薬を服用中にもし飲酒すると、悪心・嘔吐、頭痛、動悸、顔面紅潮、呼吸困難などの不快な反応を引き起こします。そのため、抗酒薬を服用している間は、生活の中で飲酒をしたくなるような出来事があった場合にも、「気持ち悪くなるからやめよう」と、心理的に飲酒を断念しやすくなるという作用を持ち、結果的に断酒の継続に役立ちます。抗酒薬は、きちんと服用ができていれば、断酒維持のための効果は高いものの、重症の肝硬変や心・呼吸器疾患のある場合は使用できない、アレルギーや肝障害といった副作用を引き起こす場合がある、そもそも飲みたくなったら抗酒剤の服用をやめてしまうといった問題点もありました。
   一方、アカンプロサートは、脳に作用して、「飲みたいという気持ち」そのものを軽減させる作用を持った薬剤です。比較的安全性が高く、抗酒薬のように飲酒時の頻脈などの反応を引き起こさないため、高齢者などにも投与しやすいという特徴があります。また、研究は少ないものの、薬の相互作用が少ないため、抗酒薬との併用も可能だと考えられています。

アカンプロサート(レグテクト)の有効性

 

  アカンプロサートは、1989年からヨーロッパで、2004年からはアメリカ合衆国でも使用されており、海外では以前から使用されています。海外では有効性についての研究も数多く行われ、研究の条件によって結果は異なりますが、いくつかのメタ解析(複数の研究の内容を吟味してもとめて解析する方法)では、全体的にはアカンプロサートが有効であったという報告が多いです。コクラン・レビューによる24の二重盲検ランダム化比較試験のメタ解析によると、アカンプロサート投与群はプラセボ群に比べて、再飲酒のリスクが14%低く、断酒日数は11%多かったという結果が報告されています[1]。また、我が国の治験での結果でも、アカンプロサートはプラセボに比べて約10%断酒率を改善させました。
  アカンプロサートは、断酒がある程度できている人が服用することで効果を表すといわれています。現在飲酒している人が、アカンプロサートを服用しても、飲酒量を軽減させる効果はないようです[2]。あくまでも断酒が前提となり効果を発揮するので、他の心理社会的な治療と組み合わせて使用することが必要とされています。

アカンプロサート(レグテクト)の作用機序

  アカンプロサートの作用機序は、はっきりとわかってはいません。脳内には依存症の形成に大きく関係する報酬系と呼ばれる神経回路があり、様々な神経伝達物質がその働きを調節しています。アカンプロサートは、そのような神経伝達物質の一つであるグルタミン酸の受容体であるNMDA受容体の働きを阻害することが、アカンプロサートの飲酒欲求作用と関係があるのではないかと考えられています。他にも、同じく脳内の神経伝達物質の受容体であるGABA−A受容体の作用を増強することや、神経保護作用が効果と関係があるとも考えられています。また、最近の報告では、アカンプロサートカルシウムのカルシウムイオンが、その作用をもたらすのではないかという説もあります[3]。このように、まだはっきりとしたメカニズムは解明されていませんが、アカンプロサートは脳内での何らかの作用により、その効果を現すものと思われます。

アカンプロサート(レグテクト)の副作用

  アカンプロサートの副作用で最も問題になるのは、下痢や軟便が現れることです。特に投与初期に現れやすく、しばらく服用を続けると軽快することが多いようです。他に、頻度は高くありませんが、アレルギー、眠気、吐き気などが副作用として挙げられています。アカンプロサートは腎より排泄されるので、透析を伴うような高度な腎障害のある患者では禁忌とされています。

アカンプロサート(レグテクト)は、専門医で処方を受けてください

 このように、従来の抗酒薬とは異なる作用メカニズムを持つアカンプロサートが治療のオプションとして用いられることになったことは、今後のアルコール依存症の治療成績の向上のために大いに役立つものと期待されています。しかし、先に述べたように、この薬はただ飲んでいれば飲酒問題が解決するというタイプの薬ではありません。きちんと断酒を行い、アルコール依存症についての正しい知識を学び、飲酒に対しての考え方を変えた上で服用して、初めてその効果を得ることができる薬です。そのため、ただこの薬を処方され服用するだけではなく、他の心理社会的な治療と組み合わせて使用することが必要と注意書きがつけられています。アカンプロサートの効果を十分に得るためは、アルコール依存症の専門の治療プログラムを持つ病院で診察・処方を受ける必要があります。

アルコール依存症の新治療薬(アカンプロサート)に興味がある方は、ぜひ久里浜医療センターのアルコール外来にご相談ください。

アルコール依存症治療情報等はこちらから

参考文献

1. Rosner S, Hackl-Herrwerth A, Leucht S, Lehert P, Vecchi S, et al. (2010) Acamprosate for alcohol dependence. Cochrane Database Syst Rev: CD004332.
2. Mason BJ, Lehert P (2012) Acamprosate for alcohol dependence: a sex-specific meta-analysis based on individual patient data. Alcohol Clin Exp Res 36: 497-508.
3. Spanagel R, Vengeliene V, Jandeleit B, Fischer WN, Grindstaff K, et al. (2014) Acamprosate produces its anti-relapse effects via calcium. Neuropsychopharmacology 39: 783-791.


























ページTOPへ
Copyright(C)2010 National Hospital Organization Kurihama Medical and Addiction Center. All Right Reserved.