久里浜医療センター

WHO (世界保健機関) アルコール関連問題研究・研修協力センター

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東日本大震災関連

謹んで地震災害のお見舞いを申し上げます

A. 被災地での飲酒・こころのケア

被災してから時間がたつにしたがって、こころの問題が大きくなってきます。久里浜医療センターでは、とくに飲酒問題に焦点をあてて、以下のように現場ですぐに使えるさまざまな資料を作成しました。被災地での飲酒問題の啓発や予防に使用いただければ幸甚です。

1. 被災地での飲酒について

被災地での飲酒の啓発パンフレットです。すぐに印刷して配布可能です。岩手県版と宮城県版を用意しました。各県の2ページ目(両面印刷の裏面)には、飲酒問題に関する相談先がリストされています。

2. 災害後の飲酒に関する研究エビデンス

世界で起きた災害とその後の飲酒の関係について、今までの研究を簡単にまとめたものです。災害と飲酒がどのような関係になっているか確認するために作成しました。

3. うつ病、PTSDの簡便なスクリーニングテスト

現場で使用できる簡便なうつ病(2問)、PTSD(4問)のスクリーニングテストです。周知のとおり、うつ病やPTSDは飲酒問題の危険要因です。もちろん、これらのテストは、飲酒問題と切り離して、うつ病、PTSDのスクリーニング目的で使用できます。

4. 飲酒問題のスクリーニング・介入ツール

現場で使用可能な、飲酒問題のスクリーニングと介入ツール1式です。このツールは、まず対象者の飲酒問題の程度を評価し、アルコール依存症まで至らない大量飲酒者には減酒指導を、依存症者は医療機関への紹介を勧めるようにできています。ツールは、以下のもので構成されています。なお、ツールは岩手県版と宮城県版を用意していますが、最後の相談先の情報以外はすべて共通です。相談先をそれぞれの被災県の実情に合わせて作成いただくことにより、両県以外でも使用可能です。

  1. スクリーニング・介入ツール(岩手県版、A4で4ページ)
  2. スクリーニング・介入ツール(宮城県版、A4で4ページ)
  3. スクリーニング・介入ツール(飲酒日記、A4で4ページ)
  4. スクリーニング・介入ツール(使用マニュアル、A4で7ページ)
  5. スクリーニング・介入ツール(資料1、A4で2ページ)
  6. スクリーニング・介入ツール(資料2、A4で1ページ)
  7. スクリーニング・介入ツール(資料3、A4で1ページ)

B. 東日本大震災久里浜医療センター被災地派遣活動報告

平成23年3月11日の東日本大震災発生後に、当院では災害被災者のための「こころのケアチーム」を岩手県大船渡市に派遣いたしました。期間は平成23年3月24日から平成24年3月末までの約一年間です。派遣チーム数は52班で、チームの構成は基本的に精神科医、看護師、精神保健福祉士あるいは臨床心理士各1名、合計3名からなる医療チームです。発災期の4月末までは活動に必要な物資の調達などのため、事務職員1名がメンバーに加わりました。また、平成24年秋には、栄養士、臨床検査技師、事務職員がチームに合流するなど、病院をあげての支援体制を構築し、のべ173人の職員を派遣してきました。各チームの活動状況は、以下の報告を参照ください。

当院の被災地派遣は厚生労働省および国立病院機構からの応援要請に基づき、岩手県からの依頼を受けて行ったものです。チームは大船渡市の保健所のコーディネイトで市の保健師や全国から支援にやってきた医療チームや保健師チームとの連携で行われました。支援の内容は、おもに避難所、仮設住宅、自宅を訪問し、震災を経験したことによる「悲嘆反応」、「うつ状態」、「アルコール問題」をもつ被災者の方たちを診察することでした。また、被災をきっかけに「アルコール関連問題」が出てくることを予見して、「飲酒問題のスクリーニングと介入ツール」を開発し、大量に印刷して岩手県や宮城県に提供するとともに、当センターのホームページに掲載し自由に使っていただけるようにしました。また、保健師をはじめとする現地の支援スタッフに対して、その使用方法に関する研修会を開きました。

活動は震災直後の緊急的な対応が必要な第T期(平成23年3月24日から4月末まで)と、被災者が避難所から仮設住宅に移り緊急性が少なくなった第U期(平成23年5月から平成24年3月)に分けられます。第T期の主要な役割は、派遣保健師チームが個別訪問や避難所での健診で発見した「こころのケア」が必要な被災者の方たちへの訪問診察でした。担当地区の避難所を巡回し、さらに自宅で医療チームを待っている方たちへの訪問診察を行い、第T期の対応件数は158件にのぼりました。この時期は、「こころのケア」だけではなく、「風邪」、「高血圧」など身体の健康問題にも対応しました。特に、被災によって医療機関への通院ができなくなり、処方を受けられなくなった方たちへ、持参した医薬品をできるだけ提供するようにしました。

第U期に入り、避難所から仮設住宅への訪問が中心となりました。この頃になると全国からの医療チームも派遣活動を終了してゆき、平成24年9月から大船渡地区への医療チーム派遣は当院だけになりました。また対応内容も「アルコール問題」が増え、定期的に仮設住宅への訪問を継続して8名の被災者の方へ「飲酒教育」と健康状態や精神面の見守を続けました。第U期は3月末までに、「うつ症状」、「不眠」、「認知症」などを含めて総数84件に対応しました。また保健所からの依頼で仮設住宅の健康教室や民生員の方々に対する研修も行いました。

東北では自然災害と共に生活をしてきた風土があり、被災者の方たちは辛抱強く、「不眠」や「うつ症状」があっても医療に頼ろうとしない傾向があります。また漁業を営みながら毎日飲酒をしてきた生活習慣があり、アルコール問題を理解していただくのが難しい状況もありました。現地に派遣されたスタッフは普段の医療と異なる中での活動を通して、多くの貴重な学びをさせていただきました。当センターからの派遣は一旦終了していますが、被災地からの要請があれば、今後も必要に応じた支援をしていく所存です。

最後になりましたが、被災地の一日も早い復興を心から祈念しております。


C. 久里浜医療チームに関するマスコミ報道

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